相続対策として考えられているものには、大きく分けて次の6つがあげられます。
これらは、最終的には「遺産分割対策、納税資金対策、評価引下対策」の3つの柱へとつながっていきます。
これにさらに譲る側にとっても老後資金のために安定した資金を生むとともに、もらったほうもうれしい収益性の高い、稼げる資産でなければなりません。 すなわち、「安定経営対策」も必要となります。
安定経営対策については、資産活用の仕方を工夫するという話になりますが、上記のうち、 最も大切なことは相続を争族にしないことを前提にしなければなりません。
相続対策はお客様のタイプ、つまり資産の構成等によって検討すべき内容が異なります。
資産家のお客様について、次のような分類が可能です。
例えば、地主さんタイプのお客様であれば財産に占める土地の割合が大きく流動性が乏しいという課題があります。
また、企業オーナータイプも非上場企業株式の評価が高額な場合には地主さんの持つ土地よりも換金性が低いため、自社株対策が必要となります。
金融商品の比重が高いお客様についても流動性は高いのですが、金融商品は不動産などで所有するよりも相続税評価額が高いケースが想定されるため、相続税対策としての資産の組み換えについても検討が必要となります。
相続税の特例には、配偶者控除や小規模宅地の評価減など遺産分割が整うことが条件となっているものがいくつかあります。
したがって相続税の申告期限までに遺産分割を行うことが結果的に節税につながります。
さらに、相続税の納税などのためなど相続後3年以内の譲渡であれば、相続税額の取得費加算という所得税の特例もあります。これにより譲渡する際の所得税が節税できます。
また、相続財産に賃貸用不動産などの収益物件が含まれている場合には、その管理の所在を明らかにすることなどにより節税以外の効果、収益力の維持と確保も考える必要があります。
相続人の決まらないと法定相続分による共有状態になり管理や保守などの面でトラブルや問題が起こりうるからです。
円滑な遺産相続のためには、相続人間のコミュニケーションが不可欠であるとともに、逆にちょっとした言葉の行き違いやいわなくとも分かるだろう…的な安易な考えはトラブルのもとになる可能性があります。
分割しにくい土地よりも預金や株式などのほうが分割しやく、トラブルの防止になります。生命保険などで代償分割資金や分割資金を準備することも有効です。
このように遺産分割の筋書きを生前に考えて、トラブルのない相続準備を行いましょう。
相続対策が予想される場合や、遺産分割を自らが指定したい場合などには遺言(特に公正証書遺言)を作成することが有効となります。 遺産分割の方向性を在命中、続開始前に対策を考えておくことが大切になります。
相続税の納税は、現金一括払いが原則です。
ただし、納税を延長できる延納や金銭でなく不動産や有価証券で納付する物納も条件付で認められます。
しかし、あくまでも現金納付が出来ない場合のみ、物納は延納でも無理な場合のみ認められます。これも要注意です。
相続税の税負担を不必要に増加させないように、延納による利子税や滞納による延滞税を防いだり、無用な財産の処分を防ぐ意味で相続財産のうちに納税資金に充てられるように定期預金などで準備する必要があります。
不動産の一部を生前に処分して総資産中の流動資産の比率を高めたり、生命保険などで納税額を準備することも必要です。
また、物納用に物納しやすい財産(測量済で権利関係のトラブルのないような物納適格財産)を確保しておくとよいでしょう。
相続発生後であれば、物納が認められやすそうな相続人に物納用の財産を相続させるという方法もあります。
相続財産のうち土地や家屋には相続税の評価を下げる要素があります。
特に居住用の賃貸不動産などには評価額の引き下げの効果が高いといえます。 墓石など祭祀用の財産は相続税が課税されません。 生前にこれらを用意しておくと節税につながります。
また、測量や分筆など相続税の申告や不動産の売却時に必ず必要となる手続きは生前に済ませておくとよいでしょう。
暦年課税による生前贈与等で、生前にある程度の期間と贈与税というコストをかけて相続財産を減らしておくことも重要です。
さらに、近い将来に二次相続が予想されるケースでは、二次相続をを考えた相続対策や遺産分割も節税のためには大切です。
このほかにも相続税対策としてはいろいろなものがあります。
しかし、過度の相続税対策は租税回避行為とみなされる可能性もあるとともに、バブル期に相続税対策として行ったことが今では多額の損失を生み出しているなどの本末転倒となるリスクもあります。
相続税対策を考えるうえでは慎重に行うことが必要でしょう。